介護現場では日常業務の一環として、バイタルサインをチェックしているケースが数多く目立ちます。ちなみにバイタルサインとは、人が生命を維持するために欠かせない幾つかの兆候を指します。そのうち体温と脈拍は、比較的容易に判断できるバイタルサインです。とはいえ人間の生命と直結している以上、単なるサインとして考えるのではなく、異常事態にスピーディーに対応するためにも、各バイタルサインの特性や異常値の見極め方などの医療知識を介護士は十分に理解することが大切です。
体温は、利用者の身体状況だけでなく測定する部位や室温、食事や入浴のタイミングなど様々な条件で変動します。例えば室温が10度上昇すると、体温も0.7度高くなります。ちなみに成人の正常体温は36度から37度の範囲ですが、高齢者はこれよりもやや低い数値を示す傾向があります。体温の様々な変動条件と照らし合わせて、毎日正確に測定することが求められます。そして異常な数値であれば、速やかに対応しなければなりません。
脈拍についても、変動条件や異常値などを知っておく必要があります。成人の正常脈拍は1分間に60回から80回。高齢者ではこれよりやや少なくなります。ただし性別や年齢、体温や精神的興奮の他、食後や入浴後といった変動条件があると数値にも何らかの影響を及ぼします。仮に変動条件が無いにも関わらず、脈拍が何らかの異常値を示したら警戒が必要です。例えば1分間に100回以上の頻脈や60回以下の徐脈、脈拍のリズムが乱れる不整脈、そして脈拍が抜ける結滞などが、これに該当します。